自分を深く知るということ
心・精神 診療のこと
うつ病などの誘因として、過労による脳機能低下がよくいわれます。治療当初は休養が重要といわれるゆえんです。ただ、受診前の状況を聞くと、人間関係上のストレスを認めることが多くあります。例えば上司の無理解や叱責(しっせき)が続いていた、などです。
復職にあたり配置転換などを相談することも少なくありません。ただ、逆境体験はそのひとの思考や感情の特性もあらわにします。例えばあるひとは、叱責に対し「自分は無能な人間だ」あるいは「誰も自分を理解してくれない」「他人は信じられない」などの思考、無力感や悲哀の感情を生じやすく、怒りを秘めていることもあり、それが長期にわたり心の奥に抱えてきたものであったりします。
ですから、逆境体験が自分にもたらす影響をよく知ること、自分を深く知ることは、今後のストレスマネジメントや再発予防、他者との付き合いの改善に大きく役に立ってくるのです。
(2024年8月執筆)