「こころの居場所」の意味
心・精神 診療のこと
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』というライトノベルを読みました。若いサラリーマンが酔った勢いで、行き場を失った家出女子高生を自宅に保護し、その結果、奇妙な同居生活が営まれていく、という話です。
性的搾取などはなくとも、法的にも世間的にもNGですし、家出の社会的実態を解明する社会派小説というわけでもありません。しかし、少女は同居生活を通じて主人公と交流し、支えられ、やがて家出の引き金となった家庭や学校の問題と向き合い、最後は自宅に戻っていく、という心温まる、ちょっと切ない結末で終わっています。
この小説が温かいのは、精神分析がいうところの「耐え難い情緒を耐えられるようになり、こころの成長が促される心的空間」という意味での「こころの居場所」というものが、ひとにとっていかに大切かを描いているからだ、と思います。
(2023年10月執筆)