自分を集団に委ねないこと
心・精神 時事
大学病院時代、悪質な洗脳、霊感商法、政治家との癒着などが今話題のカルト教団の信徒の研修指導医になった経験があります。大学長が復古的道徳、政治思想の持ち主で教団と親和性があり、多数研修を受け入れていたのです。
その研修医は患者に性道徳を説教したり、独善的なやり方でスタッフを困惑させたりしましたが、表面はまじめで穏やかな人物でした。しかし「自分」で考えず、「自分」の全て、こころも思考も教団に任せて委ねていました。すると本人に葛藤はなくなります。しかし内心は恐怖が支配しており、他者とのコミュニケーションは成立しません。こういう人格は、集団や国家に自己を委ね同一化する権威主義的人格の極致といえます。
「自分に心地よい閉ざされた世界の枠」を超え、個人として自立し、そして「自分自身で悩み考える」ことの重要性を身に染みて感じるこの頃です。
(2022年8月執筆)