こころの中のひきこもり
心・精神 診療のこと
長年傷つきを体験した人は、精神分析療法で似た夢を話します。夢の中で自分は倉庫や離島など隔絶して安全と思える場所にいます。外は危険なので出ないようにしています。夢が表すこころのあり方は、いわばこころの中の隠れ場所へのひきこもりです。中にいるのは傷ついたこどもの自分で、他者と触れようとすると傷つきが恐くて外に出られません。外界とは仮の大人として生きる自分が交渉します。
こうなると傷ついたこどもは、ひととの関わりが遮断され、癒されることがありません。傷つきを抱えたひとが他者と真に親密な関係を結び、適切に助けを求めるのが困難なのは、このようなこころのあり方によります。では、ひきこもった中の世界が快適かというと、結局は暴力組織が支配する恐怖と苦痛の世界だったりします。どのようにして傷ついたこどもに接近できるか、それが精神分析療法の最大の課題です。
(2021年12月執筆)