ひとのこころの二つのありかた
心・精神 時事
ひとのこころは二つの状態を行き来しています。一つは自己が悪い対象に攻撃され滅びる、という不安に支配される状態です。すべては全か無か、善か悪か、敵か味方かの二分法で認識され、一方は完璧な善と美、他方は悪の根源と見なされます。認めたくない自己の破壊性や欠点は全て悪い他者の特性とされ、自他の姿は歪曲され現実に基づいた認識は不可能で訂正不能です。この状態を専門家は妄想分裂ポジションと呼んでいます。
そして自己の破壊性と他者に与えた傷つきに直面できると、ひとは真の罪悪感と償いの気持ちを自覚し、そして初めて他者への愛と思いやりを体験します。これが抑うつポジションと呼ばれる、より成長した在り方なのです。
いじめとヘイトとハラスメントに満ちた現在の日本は、妄想分裂ポジションに退行しています。ここを脱して自他のつながりを回復するには、自己の攻撃性に直面する必要があるのです。
(2017年11月執筆)