うつ病の薬物療法選択と性格診断
心・精神 薬 診療のこと
薬物治療はなお心療内科治療の中心にあります。私は精神分析・精神療法が専門ですが、適応を考えると多くはまず投薬中心になります。例えば、うつのひとに心療内科の敷居はなお高く、初診では即効性治療を要します。うつの診断には性格診断が不可欠で、精神分析的理解は性格を含め多次元的見たてを与えてくれますが、それはまずは処方選択に利用されます。実はこの選択が数か月、数年の経過に大きな差を生むことがあります。
うつが長引く理由の一つに双極性要素(気分が高い方にも触れる性格傾向)の見落としがあり、むしろ単極性うつ病が過剰診断されているようです。これは単極うつ病の病前性格論が日本に輸入された際に偏りが生じ、単純化され普及したからです。双極のうつの場合、抗うつ薬が効きにくく時に経過を不安定にします。また安定剤を漫然と利用し続けると、うつ状態への再発が増加することもあるのです。
(2018年3月執筆)