胃運動障害(胃アトニー)
ペット 診療のこと
胃の運動低下に伴う胃内容の排泄時間の延長は、比較的多く診られる疾患です。食欲不振、昨晩食べた食物を朝に未消化の状態で吐き出すなどの症状が見られます。胃拡張・胃炎・胃潰瘍などの疾患時だけでなく、電解質異常・代謝性疾患などでも認められます。胃の運動性は神経的でなく消化管ホルモンによっても調節されているため、胃の運動低下の病態は複雑であると考えられます。さらに膵炎や小腸疾患でも胃の運動障害が起こります。診断には胃のバリウム造影検査を行い、正常なら5〜15分で胃より排泄が始まり、1〜4時間で胃からの排泄が完了すると言われています。胃の閉塞や膵炎を除外して、胃の運動調節剤や胃液分泌抑制剤などの使用で反応を観察します。主に胃炎・胃潰瘍・腫瘍・代謝障害などの基礎疾患によって引き起こされていることが多いことから、原疾患の診断・治療を合わせて行う必要があります。
(2016年8月執筆)