
ギザギザした光の波 ―閃輝暗点―
頭部・首・肩
突然、目の前にチカチカした光が現れ、ギザギザした模様が拡がっていく、そんな症状を経験した人がいるかもしれません。場合によっては視野が歪んだり、一部が暗く欠けて見えたりすることもあります。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、何らかの誘因により、視覚をつかさどる後頭葉で一時的に神経活動や血流の変化が起こることが原因と考えられています。作家の芥川龍之介もこの症状に悩まされ、遺作『歯車』の中で「半透明の歯車が殖えて回りだす」、「細かい切子硝子を透かして見るよう」と表現し、自己の不安や苦悩と重ね合わせました。
閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として現れ、その後に頭痛を伴いますが、頭痛を伴わない人もいます。特に50歳以降の女性に多い印象があり、大半は異常が見つかりません。ただし、まれに脳の病気が隠れている場合もあるため、一度は検査を受けておくと安心です。
(2025年9月執筆)













