自分のこころを想い、触れ、知る、ということ
心・精神 診療のこと
自分のことは自分が一番わかると思いがちです。しかしひとはどのくらい自分のこころを見つめ、触れることができているでしょう。英国で難治性うつ病の複数の治療を比較した研究があり、最も有効だったのが精神分析治療だったという結果が出て驚かれました。特に注目されたのは、精神分析では、治療後にむしろ治療効果が増していったのです。
精神分析治療を経験すると、ひとは自分のこころを、自分の力で、考え、想い、触れ、よりよく知るようになります。自分のこころを知るのは辛く悲しいこともあり、そのため時には暴力的と言えるほど、自分のことを考えるのをやめ、自分のこころと繋がりを遮ってしまうひともいます。しかしこの痛みを超え、自分のこころを想い、触れ、知っていく営みによってこそ、ひとは自分のこころを自由にし、ますます自分を強く支えることができるようになるのです。
(2022年2月執筆)