俺は「本物の依存」がほしい!
心・精神
長年のいじめで孤独癖を拗らせ、捻くれた心理洞察力を持つ高校生主人公と、優秀な美少女ゆえに嫉妬に晒され孤高を貫くヒロインを描く青春小説が、若い人に人気です。不器用な2人はうわべでない「本物」の関係を求めますが、ヒロインは自分が「依存」する偽物だと2人の関係を終わらせます。この小説の主題は精神分析の最重要の洞察に関わっています。
実は依存は人生に不可欠で、母親に依存し体とこころの糧を得て成長する乳児期から一生続きます。依存することは意外にも誰もが困難で、相手が他者で、自分にない良いものを持つことを受け入れ、そこで感じる羨望や屈辱に耐えねばなりません。それが受容できないと成長は妨げられ、孤立・不安・苦しみが生じます。一方偽の依存は、理想の押し付け、対人操作、虐待など相手を自分の一部にして利用しますが、何も得られず空虚と絶望が残ります。
さて小説の中の2人の行く末は…。
(2019年5月執筆)