胸腺腫と重症筋無力症
胸部・腹部 診療のこと
胸腺は免疫の生成に関与する臓器で前胸壁中央の裏、心臓より上にあります。思春期頃まで胸部レントゲンでも確認できるほど増大し、その後退化していきます。胸腺腫は胸腺に発生する腫瘍で胸腺がんと異なり、多くは発育が緩徐で転移や周囲組織に浸潤しません。それ故に無症状のことが多く、胸腺腫が分泌する物質で起こる随伴症候群や健診で初めて見つかることも多いのです。
随伴症候群で多いのが重症筋無力症です。これは自己抗体が神経と筋肉の接合部に作用して筋肉が動きにくくなる病気です。まぶたが下がる(眼瞼下垂)、物が二重に見える(複視)で始まることが多く、朝休んだ後は軽くて夕方にかけて増悪します。また食べている途中で顎が疲れ食べにくくなったり、会話中に声が出せなくなったり、四肢の筋力低下や疲労が出やすくなり、重症では呼吸困難になります。多くは胸腺腫摘出手術が必要です。
(2018年9月執筆)