歯科分野における「骨吸収」
口・歯 診療のこと
皮膚などの体組織が新陳代謝を行うように、骨も新陳代謝を行っています。一般的に弾力と硬さを失った骨が破骨細胞によって分解されることを「骨吸収」、一方で骨芽細胞によりコラーゲンを生成し新たな骨を作ることを「骨形成」といいます。この繰り返しで骨は生まれ変わります。歯科分野から見ると、歯は歯槽骨という骨で支えられています。この歯槽骨はさまざまな理由により骨吸収が起こってしまい、放っておくと歯が抜けてしまう恐れがあります。
歯槽骨が吸収されてしまう原因は多数挙げられますが、その筆頭が歯周病です。歯周病菌が出す成分によって歯槽骨を破壊してしまいます。日本歯周病学会によると、日本人の歯を失う原因の第1位(37%)であり、罹患率は45~54歳で50%、55歳以上は55~60%と発表されています。また、歯の喪失によっても骨吸収は起こります。
歯を失うと、残っている歯に過度な負担が掛かり、食べ物をかむときなどは圧力がかかります。この圧力に破骨細胞が集まり、骨を減らすことで圧力を緩和しようとします。つまり歯の本数が減ると、残された歯を守るために歯槽骨は吸収という形で影響するのです。
いつまでもおいしい食事を楽しむために歯周病を予防し、歯を失った箇所は補って、今ある健康な歯を守っていきましょう。
(2023年11月執筆)