寒時は闍黎を寒殺し、熱時は闍黎を熱殺す
心・精神 診療のこと
「かんじはしゃりをかんさつし、ねつじはしゃりをねっさつす」と読みます。禅の言葉で暑さ、寒さ、つまり不安、抑うつなどの苦痛を徒に消そうとせず、心を開き、まず暑さ寒さに「なりきる」と言います。さもないと苦痛に振り回され結局悪化するからです。
暴論のようで認知行動療法や精神分析療法に通じる所があります。無論治療では、まず話を傾聴し、時に薬も使い、苦痛を和らげようとします。しかし例えば常用される抗不安薬も、実は不安どころか精神病的な興奮や妄想さえ一定期間なら消せることもありますが、それだけでは結局いずれこじれてしまうこともあります。苦痛はどこかで心にありのままとどめ置き、受け止めつつ自ら越えていく構えが肝要な所があります。治療者は苦痛に寄り添い、時期を測りつつ、そっと後押しします。それでこそ、ひとは苦痛を少しずつ越えていけるようです。
(2018年9月執筆)