縦隔動揺
胸部・腹部
縦隔とは左右を肺に、前後を胸骨と胸椎に囲まれた胸の中央部で、心臓・大血管・気管などがあります。正常では呼吸に伴い縦隔が大きく揺れ動くことはありませんが、縦隔が揺れて重篤な呼吸困難を来すことがあり、「縦隔動揺」といいます。
交通事故や落下事故などで2か所以上の骨折をした肋骨が数本できると、その部分の胸壁の剛性が失われ、呼吸に合わせて凹んだり膨らんだりします。すなわち吸気では胸腔内が陰圧になるので骨折部の胸壁が凹み、肺を押すので空気を吸い込めず、縦隔も対側へ押されます。逆に呼気では胸腔内圧が上昇し骨折部が胸壁外に膨らむので、骨折側の肺内が十分な陽圧になれないため空気を吐き出せず、縦隔も骨折側に引かれます。呼吸をしても縦隔が左右に振れ、骨折部の胸壁が陥凹・突出するだけで、十分な空気の出し入れができず危険な呼吸困難を招きます。緊急な処置が必要となります。
(2020年10月執筆)